当然,知識の評価のあり方も変わる。従来は,深い専門知識を持つ者は,ゼネラリストよりも価値があると考えられてきた。専門知識は「正確さ」と同様に,情報が十分にないスモールデータの世界ゆえに重宝がられ,勘と経験で水先案内人を務めてきた。そういう世界では経験が物を言う。それは,長年にわたって身をもって覚えたノウハウだから,簡単には伝授できないし,教科書にまとめることも難しい。ひょっとしたら,本人は意識さえしていないかもしれない。しかし,データを大量に持つことができれば,大きな武器になる。ビッグデータを分析することで,迷信や古い考え方に振り回されにくくなる。自分が賢いからではなく,データを持っているからだ。言い換えれば,会社で価値を発揮できる従業員の条件も変わる。身に付けておくべき知識も変わるし,知っておくべき人間も変わる。職業人として身に付けておくべき資質も一変するのだ。
∨・M=ショーンベルガー&K.クキエ 斎藤栄一郎(訳) (2013). ビッグデータの正体:情報の産業革命が世界のすべてを変える 講談社 pp.214-215
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