グーグルも,データの魔力に翻弄されないように,もう少し認識を改めるべきだろう。SATスコアやGPAといった尺度は,いくら人生を長く生きてきても,変えようのないものだ。おまけに学識以外の知識をまともに評価できないシロモノである。人間性の面から見た資質も反映されていない。科学やエンジニアリングの世界と違って,人間性の面での知恵は定量化しにくいからだ。
実はグーグル創業者は,成績よりも学びの姿勢を重視するモンテッソーリ式の教育を受けてきた。そんな背景を考えると,人事採用時にSATスコアのようなデータに執着するのは余計に奇異に映る。過去の技術系企業は,実力以上に粉飾された履歴書をありがたがってきたわけだが,その誤りを繰り返すことにもなる。博士課程中退組のラリーやセルゲイが,伝説のベル研究所に就職していたら,マネージャーになれるチャンスはあっただろうか。グーグルの基準に照らせば,ビル・ゲイツもマーク・ザッカーバーグもスティーブ・ジョブズも大卒ではないから,昇進どころか入社もできないのである。
∨・M=ショーンベルガー&K.クキエ 斎藤栄一郎(訳) (2013). ビッグデータの正体:情報の産業革命が世界のすべてを変える 講談社 pp.249-250
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