そもそも,どこに境界線を定めるのであれ,その両端にいる人たちはまったくと言っていいほど変わらないはずだ——にもかかわらず,一方は病気だと言い,他方は健康だと言うのはばかげている。191センチの人も192センチの人も背が高いのに変わりはない。それに,何パーセントで区切るのか。精神保健の臨床医がわずかしかいない発展地上国なら,最も重い障害を抱えた人しか精神疾患と見なされないはずだ——そうなると,1パーセントしか正常ではないように境界線が定められるかもしれない。セラピストだらけのニューヨークでは,精神疾患の条件が急激にゆるやかになっているので,境界線は30パーセントかそれ以上のところに定められるかもしれない。これは独断に満ちており,美しい曲線もどこに線を引くべきかはけっして教えてくれない。
アレン・フランセス 大野裕(監修) 青木創(訳) (2013). <正常>を救え:精神医学を混乱させるDSM-5への警告 講談社 pp.38-39
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