その頃,行動を数値に置き換えていくことが科学的研究の必須であると,自分なりにようやく分かりかけてはきたが,現在のように統計・推計的処理はまだまだ先の話である。それにコンピューターなどという利器は存在していなかった。たかだかデータをパーセンテージで表記することぐらいであった。
広島文理大学に古賀先生という社会心理学の泰斗のような方がおられた。この古賀先生が何十年かの研究生活の中で分散分析法を使い新しい社会心理学の道を開かれたのだが,その分散分析法が単純な計算ではあるが大量の数式を計算していかなければならない。古賀先生は何十年もかけてタイガー計算機という手回しの機器を使い仕事をされた。しかし,もし現在のコンピューターに計算を任すと,恐らく30分もあれば古賀先生の一生の研究結果が打ち出されてくるのではないだろうか。
三宅 進 (2006). ハミル館のパヴロフたち:もうひとつの臨床心理学事始め 文芸社 pp.44-45
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