古武先生は
「ドクター論文というのは卒論とか,マスター論文とはわけが違う。その人間の研究の集大成のようなものと考えてほしい。そして,そこから,また新たな研究が始まるということや。だからドクター論文は少なくとも審査者がいる学術誌に2,3編は載せ,学会発表は年1回は必ず行なうことによってドクターになる資格ができる。それだけの業績を積もうと思ったら,スクーリングが終わって論文を書いたからといってすぐドクターになれると思うな。ただ,医学部などは比較的簡単にドクターになるが,あれは職業上,医学博士という肩書きが必要だから,教授の先生はなんとかして博士にしてやろうと努力をされる。しかし,文学博士は,そう簡単にティーテル(博士号)は出さない。大学の歴史は長く,日本の大学も多いが,いままで文学博士と名がついている人間は全国でもそうおらん。だから文学博士という名称は昔から言われているとおり,『末は博士か,大臣か』というくらいに権威のあるものなのだ。そのつもりでおれ」
と,常日頃からおっしゃっていた。
三宅 進 (2006). ハミル館のパヴロフたち:もうひとつの臨床心理学事始め 文芸社 pp.208-209
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