この点に留意しながら,まずはおおざっぱに把握しておくなら,オタクという言葉は,オタク周辺の狭い範囲を超えて広く流布していくに際して,以下のような3つの次元を混在させていたように思われる。
(1)彼らが消費している対象(消費次元)
(2)作品を消費する過程で彼らが展開するコミュニケーションの様式(コミュニケーションの次元)
(3)そのコミュニケーションの根底にあると周囲から想定される彼らの人格(人格類型の次元)
オタクという言葉を用いて達成される事柄には多くのものが含まれるが,その中でも重要なのは,誰かを,あるいはときに自分自身を,ある特定の集団に属するものとして切り出すといった操作だろう。ここにあげた3つの次元はそのような切り出しの手がかりとなると同時に,そのような切り出しを正当化するために参照されるものだ。
浅野智彦 (2013). 「若者」とは誰か:アイデンティティの30年 河出書房新社 pp.106-107
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