多くの一般市民は,がんの頻度は増加し続けていると考えているようだ(これはおもにメディアの影響だ)。そしてがんが増えたのは,環境や食品の汚染の拡大が原因だと思っているらしい。現実には,人口の高齢化を考慮すれば,ほとんどのがんの発生率は安定的あるいは減少傾向にある。すべての疫病調査によると,たとえば,公害(タバコは除く)ががんの原因である場合は,最大に見積もって5%程度だという。
自閉症に話を戻すと,最も頻繁に犯人扱いされるのは予防接種ワクチンである。予防接種ワクチンという措置や,食品の成分に対する不信感が高まっていることも,その背景にある。遺伝子組み換え作物に対する,ある種のヒステリックな対応や,自然食品や有機栽培の食品に偏執する態度も,そうした風潮を助長している。
ベルトラン・ジョルダン 林昌宏(訳) (2013). 自閉症遺伝子:見つからない遺伝子をめぐって 中央公論新社 pp.57-58
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