他の宗派の学校についても述べておこう。これについては井上(1997)と武田(1997)に簡単な紹介がある。1868(明治元)年に知恩院内に仏教研究のための勧学院(後の佛教大学),1887(明治20)年には浄土宗学本校(後の大正大学)を東京・増上寺内に,1873(明治6)年には既に述べた教導職への対応のために,真言宗では小教学院と1875(明治8)年には中教院をつくり,1886(明治19)年には古義真言宗大学林(後の高野山大学)を創設している。曹洞宗では1875(明治8)年に既に紹介した専門学林(後の駒澤大学)を,臨済宗では明治初期からある寮や学林を1907(明治40)年に花園高等学院(後の花園大学)と改称し,日蓮宗では1872(明治5)年に檀林を小教院(後の立正大学)と組織替えした。このようにして仏教の諸宗派は多くの学校を設立してきた。当初は僧侶養成の学校という性格が強かったが,俗人教育にも進出していったことがわかる。とはいえ,谷川(2008)が述べているように,俗人教育(すなわち普通教育)に関しては仏教系の貢献は限定されたものであった。明治,大正,昭和の戦前期にあっては,一般人の教育に関してはその主要な部分は公立学校,そして一部の無宗教とキリスト教系の私学に委任されていて,仏教系の学校の貢献度は限定されていたのである。
橘木俊詔 (2013). 宗教と学校 河出書房新社 pp.92-93
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