9世紀に始まった天台宗と真言宗,12世紀に始まった浄土宗と臨済宗,13世紀に始まった浄土真宗,曹洞宗,日蓮宗を,現代にあっては一応既成の伝統的な仏教としておこう。平安末期から鎌倉時代に生まれた法然,親鸞,栄西,道元,日蓮などが開祖となった新諸宗派は,最澄による天台宗,空海による真言宗からすれば当時は新興宗教だったのである。すなわち浄土宗,臨済宗,浄土真宗,曹洞宗,日蓮宗は設立当初とその後のしばらくの間は新興宗教だったのである。厳格に定義すれば,日本での伝統宗教は天台宗と真言宗だけである。
ところがここで書いた仏教の諸宗派(七宗派)は現代では既成の伝統的宗教とみなされており,江戸時代以降に新しく開宗した宗派,例えば天理教や創価学会をはじめ数多くの宗教は新興宗教とみなされている。天理教や創価学会のように信者が比較的多い新興宗教は,これから何百年も生き延びれば,その頃は新興宗教と呼ばれずに,伝統宗教になっているだろう。それと同時にこれから数百年の間に新しい新興宗教の誕生する可能性は十分にある。
橘木俊詔 (2013). 宗教と学校 河出書房新社 pp.125
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