ところがである。約70%の日本人が自分は無宗教と思っていても,その人口のうちの70%から80%の人が,「宗教心は大切だ」と回答しているのある。これは「神や仏にすがりたいと思ったことがある」という気持ちを代弁しているとか,あるいはそれと同義と考えてもよく,日本人の約半数の人が「宗教心は大切であるし,神や仏は存在している」と感じているのである。これは先程の電通総研・日本リサーチによるデータからの「神の存在を信じる比率」の35%前後より少し多いが,遠からずの数字である。ここで得られる結論は,日本人は自分を無宗教と思っている人が多数派であるが,かなりの人は宗教心は大切だし,神や仏の存在を認めている,ということになる。
ここでの結論に関して,宗教思想史学者。阿満利麿は次のような解釈をしている。阿満(1996)参照。宗教には「自然宗教」と「創唱宗教」の2つの種類があり,日本人は前者を信じる人はかなり(約半数ほど)いるが,後者を信じる人は少ない(20〜30%)とされる。ここで「創唱宗教」とは,特定の人物が特定の教義を唱えてそれを信じる人のいる宗教であり,教祖,経典,教団の存在を前提とする。例えばキリスト教,仏教,イスラム教を考えればわかりやすい。一方「自然宗教」とは,教祖,経典,教団を持たずに自然発生的な宗教であり,具体的な神とは何かを表現できずに,なんとなく世の中には神のいることを想定しながら,そういう神の存在を信じる宗教である。
橘木俊詔 (2013). 宗教と学校 河出書房新社 pp.175-176
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