人間の「自然な」集団サイズを知るには,いまだに文明化されておらず,とくに狩猟と採集で生活する集団に着目するのがよさそうだ。狩猟・採集社会はさまざまなレベルで複雑に機能する。食べ物を集めるために泊りがけで移動するときは,30〜50人程度の小さい集団が形成される。この集団は不安定で,途中で人の出入りもある。反対にいちばん大きい集団は部族ということになるだろう。部族とはすなわち同じ言葉を使う言語集団でもあるので,文化的なアイデンティティでまとまっている要素が大きい。部族の規模は,老若男女あわせて500〜2500人といったところ。小集団と部族集団の二層構造は,人類学の世界では常識だが,そのあいだに第三の集団がある。こちらもたびたび論じられるが,具体的な規模が語られることはほとんどない。第三の集団は「氏族(クラン)」というくくりになって,成人儀式など定期的な儀式のときに重要な役割を果たすこともあれば,狩猟場や水源を共有する集団として扱われることもある。
くわしい人口調査が行なわれた約20の部族社会では,氏族や村といった集団の平均人数は153人であることがわかった。細かく見ると100〜230人まで幅があるが,統計的には150人という平均の範囲におさまる。
ロビン・ダンバー 藤井留美(訳) (2011). 友達の数は何人?:ダンバー数とつながりの進化心理学 インターシフト pp.22
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