サル,類人猿,ヒトで異なるのは能力の種類ではなく,むしろ能力を発揮できる程度ではないかと私は思う。それはすべての哺乳類と鳥類が生きていくための基本能力でもある。たとえば因果関係を把握する,類推する,2つかそれ以上の世界モデルを同時に動かす,その世界モデルを未来の状況に当てはめるといったところか。これらの能力があわさって大きなスケールで展開される時に,心を読む能力がふと出現するのではないだろうか。それは特殊な能力のように思えるし,ある意味それは当たっているが,霊長類とかヒトだけに限定されるものではない。ほかのみんながやっていることをもっと上手にやっているだけだ。そう考えると,ネズミからヒトまで,哺乳類を構成するさまざまな種のちがいは,しょせん計算上の「誤差」にすぎないようにも思えてくる。
ロビン・ダンバー 藤井留美(訳) (2011). 友達の数は何人?:ダンバー数とつながりの進化心理学 インターシフト pp.182
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