カール・ピアソンは元来けんか好きで,抑えがたい野心を持ち,いかめしくて決然とした人物で,物事に対してあいまいな態度を取ることはまれだったが,ベイズの法則は数少ない例外の1つだった。一様な事前確率や主観性に神秘を尖らせていたのは事実だが,統計学者が使えそうなツールがほかにほとんどなかったために,悲しげに「実際的な人間なら……よりよいツールが登場するまでは,ベイズ—ラプラス印の逆確率の結果を受け入れることになる」と結論した。ケインズが1921年に『確率論』で述べたように,「科学者の目から見れば,これには未だに占星術や錬金術じみたところがあった」さらにその4年後にはアメリカの数学者ジュリアン・L・クーリッジが,これまた「わたしたちはベイズの公式を,今のところ手に入る唯一のものとしてため息混じりに使う」と述べている。
シャロン・バーチュ・マグレイン 冨永星(訳) (2013). 異端の統計学 ベイズ 草思社 pp.95-96
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