1960年代に入ると,まるで雨後の竹の子のようにベイズ派の理論が姿を現しはじめ,ジャック・グッドによると,ざっと勘定したところ地球上の統計学者の総数をはるかに超える「少なくとも4万6656種類の解釈があった」という。主観ベイズに個人論的ベイズ,客観ベイズに経験ベイズ,擬似経験的ベイズに部分的ベイズ,認識様態的ベイズに直観主義的ベイズ,論理的ベイズにファジー・ベイズに階層ベイズ,そしてハイパーパラメトリックなベイズにハイパーパラメトリックでないベイズ等々。これらのバリエーションの多くは,作り出した人間にしかその魅力がわからず,現代の統計学者のなかにも,いくら屁理屈をこねても先駆的なベイズ理論が生まれるわけではないと強く主張する者がいるのは事実だ。ある生物統計学者は,さまざまなベイズ派の理論をどうやって区別するのかと問われて,かすれた声で「汝らはその事後確率によってそれらを見分けるであろう」と答えている[マタイによる福音書7:16「あなたがたは,その実で彼らを見分ける」のもじり]。
シャロン・バーチュ・マグレイン 冨永星(訳) (2013). 異端の統計学 ベイズ 草思社 pp.237-238
PR