ウォリスの話によると,たとえきちんと確立されたわかりやすい名前があったとしても,「あの人[=テューキー]は,自分がしたことすべてに,何かしら別の名前をつけた」。新たな名前をつければそのアイデアに注目が集まるというので,ある同僚が教えたところ,テューキーは50もの用語を作り出していたという。そのうち定着したものとしては,たとえば線形計画法やANOVA[分散分析]やデータ解析といった用語がある。モステラーはある論文をまとめる際に,シャープやフラットやナチュラルといった音楽の記号を使うのをあきらめるようテューキーを説得するのに苦労したという。さらに別の同僚は,頻度(frequency)ではなく「フンド(quefrency)」だの,分析(analysis)ではなく「プンセキ(alanysis)」だの,「バカ分解(saphe cracking)」といった妙な造語をするんなら,君のことをテューキーでなくJ・W・キューティーと呼ぶぞ,といってテューキーを脅した。ウォリスが言うように「[こういう造語は]必ずしも友達を作ったり人に影響を及ぼす最良の方法ではなかった……それでもテューキーと話すときは,基本的に彼の言葉を使うように心がけた」。
シャロン・バーチュ・マグレイン 冨永星(訳) (2013). 異端の統計学 ベイズ 草思社 pp.311
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