相互作用論者はそのプロセスを「G×E」と呼ぶ。「遺伝子[gene]かける環境[environment]」を短縮した呼び名である。このG×Eは,あらゆる遺伝現象の理解にもっとも重要な概念になっている。この概念によれば,遺伝子は,瞳の色から知能までのあらゆる特徴の形成に大きな影響を及ぼすが,ある特徴をどう発現させるかを厳密に命令することはめったにない。遺伝子は,受胎の瞬間から,内外のさまざまな刺激——栄養,ホルモン,感覚入力,身体的活動および知能的活動,他の遺伝子——に反応し,それらと相互作用して,ひとりひとりの独特な環境に合わせ,独特な,カスタムメイドのヒト・マシンをつくりあげる。遺伝子はたしかに重要だし,遺伝子の違いは結果的に個々の特徴の違いにつながるが,結局のところ,われわれひとりひとりが動的システムであり,発達する生物なのだ。
デイヴィッド・シェンク 中島由華(訳) (2012). 天才を考察する:「生まれか育ちか」論の嘘と本当 早川書房 pp.31-32
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