1932年,心理学者のマンデル・シャーマンとコーラ・B・キーは,IQスコアが共同体の孤立の度合いと反比例することを発見した。文化的に孤立すればするほどスコアが低くなるのだ。たとえば,ヴァージニア州の辺鄙な谷間の町コルビンは,成人のほとんどが無教養で,新聞,ラジオ,学校へのアクセスもままならない土地だったが,住民の6歳児のIQを調査したところ,その数値は全国平均に近かった。ところが,その子供たちは成長するにしたがってIQが低くなった——学校教育もい文化になじむ体験も不十分だったために,ついには全国平均を下回ったのである(たとえばイギリスの運河船上で生活する子供たち,いわゆるカナルボート・チルドレンなど,文化的に孤立した地域や集団の子供たちにも,全く同じ現象が見られた)。だから,彼らはこう結論せざるを得なかった。「子供は環境が要求する分だけ発達する」
デイヴィッド・シェンク 中島由華(訳) (2012). 天才を考察する:「生まれか育ちか」論の嘘と本当 早川書房 pp.55-56
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