あるいは,いつか後悔するかもしれないという恐れのなかに隠れているかもしれない。ルイス・ターマンの天才遺伝子研究という感心しない名称のプロジェクトで,最期の遺産となったのが「後悔」だった。1995年,コーネル大学の3人の心理学者の研究チームが,かつてターマンの研究に協力した人びと——すでに高齢になっていた——のくわしい追跡調査を行なった。彼らの研究論文は「行動しそびれる——ターマンの天才たちの後悔[Failing to Act: Regrets of Terman’s Geniuses]」と銘打たれていた。その大きな教訓として,ターマンの協力者たちは,晩年にさしかかり,その他の高齢者たちとまったく同じ後悔をしていた。もっとできたはずだ,と彼らは考えていた。もっと勉強し,もっと仕事をし,もっと目的を貫くべきだった,と。
これこそ,われわれのすべてがルイス・ターマンの研究から学べることである。
デイヴィッド・シェンク 中島由華(訳) (2012). 天才を考察する:「生まれか育ちか」論の嘘と本当 早川書房 pp.147
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