横軸,つまりx軸は,属が含む種の数を表し,縦軸,つまりy軸は数を表す。このグラフを見れば,種をひとつしか含まない属が,400位上存在することがわかる。2種を含む属は,200より少なく,3種を含む属は,20ほどで,7種以上含む属は,ごくわずかだ。ごらんのとおり,グラフは右下がりの急なカーブを描く。
このカーブは,その形から「窪みカーブ」と呼ばれ,特に属と種のグラフのそれは,「ウィリスの窪みカーブ」と名づけられている。このカーブについては,1世紀近くにわたって分類学者の間で議論されてきた。彼らは,自分たちがこのようなパターンで種を属に分類する理由がわからなかった。なぜ分類学者は常にこのような分類を行うのだろう。なぜ民俗分類でも同じような分類がなされるのだろう。その答えは環世界にあると,わたしは考えている。わたしたちは,ウィリスのカーブを知っていてもいなくても,まさにそのカーブが描くとおりに,種が属を満たしている様子を,環世界に見ているのだ。そして,分類学者は,他のすべての人と同じく,自らの認知に支配されており,この世界を見るには,自らの環世界を通じて見るしかないのである。
キャロル・キサク・ヨーン 三中信宏・野中香方子(訳) (2013). 自然を名づける:なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか NTT出版 pp.165-166
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