こうして考えると,脳には生物だけを認識する特別な機能があることが,容易に想像できる。それは,包装やブランドで製品を識別するように,対象を形やサイズや色,全体的な外見によって識別する機能である。そこから,脳のある部位がこの機能を果たしていると考えるのは,それほど突飛な飛躍ではない。そして実際,科学者の中には,そう考えた人々がいた。彼らは,人間の頭の中には,生物を識別し,その名を判断するための特別な「領域」がもともと存在するという仮説を立てた。され,彼らは,生物を認識できなくなった患者たちの脳の中をのぞいて,この「民俗分類領域」を発見できたのだろうか。生物を認識する能力の位置,言うなれば,環世界センスの所在地を,突き止めることができたのだろうか。
キャロル・キサク・ヨーン 三中信宏・野中香方子(訳) (2013). 自然を名づける:なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか NTT出版 pp.178-179
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