内田先生がクレペリン検査にかけた期待の今一つは,クレッチメルの言う分裂性気質の者に精神分裂症に見られるのと同様の意志障害がクレペリン検査によって指摘されるのではないか,という問題であった。そこでキプラーの基質診断表によってクレッチメルの分裂質と躁うつ質との学生を選び出し,これにクレペリン検査を施行することによって,分裂質の学生に意志障害者の作業特徴を指摘することができるかどうかを確かめる研究がなされた。この際,分裂質,躁うつ質の特徴をきわめて顕著に示している学生については上半身裸体の写真をとり,ガルトンの合成写真の手法によって,両気質の体格特性がクレッチメルのいう分裂質——細長型,躁うつ質——肥満型という性格と体格との親近関係を示しているかどうかが調べられた。クレペリン検査で指摘される意志障害と,気質診断表での分裂質と,合成写真にみられる細長型の体格との三者の結びつきがとくに研究の中心とされていた。
(戸川行男記)
「早稲田大学心理学教室五十年史」編集委員会 (1981). 早稲田大学心理学教室五十年史 早稲田大学出版部 pp.8-9
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