ところで,学生以外にも,マスメディアの報道や就活マニュアル本における就活生の類型化を,簡単に信じてしまう集団が存在する。それは他ならぬ就活生の親である。親が気にして需要があるからこそ,マスメディアの報道や就活マニュアル本は存続しているのだ。
後者のマニュアル本については,2000年代に入ってから,就活生向けではなく就活生の親を対象としたものが何冊も刊行されるようになった。
親は「どこでもいいから就職してくれ」「できれば親戚に自慢できるところに就職してくれ」「安定した仕事を選んでくれ」など,自分の都合や価値観をわが子に押し付けようとする。ついでに言えば,「うるさいことは言わないから好きにしろ」も,親の願望の押し付けを巧妙に隠しているに過ぎない。そして価値観を押し付けるための材料として,マスメディア報道やマニュアル本は欠かせない。
石渡嶺司 (2013). 就活のコノヤロー:ネット就活の限界。その先は? 光文社 pp.20-21
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