いままで見てきた例からとりあえずわかることは,どんなものやことでも,その同じもの,ことが,あるとき,ある条件下で,ある脈絡に置かれているとき,占いの対象になるらしい,ということである。とくに異常性,偶然性が見てとられるとき,なんでもないことが急に意味ありげに思われ,占いの対象になるようだ。毎日くる郵便物も,「切手に消印のない手紙や葉書を受取ると夢のような儲け事がある」(愛知・市橋鐸『俗信と言い伝え』名古屋泰文堂,昭和45年)のだ。
それは,同じものやことが,ある見方,とらえ方をされたときに占いの対象になる,ということである。燕が家の中に巣を作るとき,燕は野生動物で,家畜のように飼っているわけではない,その燕が人間のすみかである家のなかに巣を作った。めずらしいことだ,異常なことだ,ととらえると,その出来事は特別の意味をもつものとなる。それを,燕は烏などの天敵から巣を守るために安全な人家を利用するだけだと見るなら,何の予兆にもならない。
板橋作美 (2004). 占いの謎:いまも流行るそのわけ 文藝春秋 pp.39-40
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