1930年代には,結婚相手や職業の選択に役立つとか,特定の職業や犯罪者と血液型とのあいだに関係があるなどと真面目に論じられ,現在以上の血液型ブームが起きた。松田の本によると「昭和6年,大阪大丸本店は,無料の血液型検査をはじめた。同じころ,路上には,血液型を知ることは結婚問題,就職,採用にも役立つなどの口上をいう的屋が現れ,紋付き羽織袴の出で立ちで,東京の大勢人の集まる博覧会とか展覧会とかまたはデパートなどを利用して,唾液によって血液型を調べ,O型は軍人,政治家,A型は医者,教員に向いているなどと言って,検査料70銭をとっていた」という。
その後,このブームは,さまざまな批判を受けて,終息するが,1つ重要な事は,当時の血液型と気質についての議論は,両者の間に相関関係が見いだせるという主張であって,具体的には,何型の人はどういう気質,性格だと判断する学問的考察だと主張されていたことである。そのため,気質や性格概念の曖昧さという問題,調査方法の適正さという問題,統計的データの処理と解釈の問題など,純粋に学問的見地からの批判が噴出し,最終的には非科学的,非学問的であるという理由と,血液型と性格を関係づける考えそのものが否定されることになった。
板橋作美 (2004). 占いの謎:いまも流行るそのわけ 文藝春秋 pp.63-64
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