福は,もともとは神からさずけられた「さいわい」を意味し,もっと広い意味で使われていたと思われる。七福神は,そういう幸福をもたらしてくれる神様なのだ。だから,金持ちになることだけでなく,長生きも,良縁も,立身出世も,名誉も,みな福であり幸福である。また,富も,価値あると思われるもの,有用なものすべてを言い,健康とか愛とか情とかも富だったのである(小松和彦『福の神と貧乏神』筑摩書房,1998年)。
それが,いつしか,狭い意味での福,富の意味に変わってしまった。福は富であり,富は物質的なもの,つまりは財産であり,お金である,というようになってしまったのである。そのよい例は,福引き,福袋だ。福引きで当たるもの,福袋の中身は,お金であり,海外旅行券であり,衣服であり,宝石であり,どれも物質的な富,金銭である。
日本の民間夢占いは,そういう日本人の現世的,物質的な幸福願望,とくにお金に対する願望があらわされていると思われる。
板橋作美 (2004). 占いの謎:いまも流行るそのわけ 文藝春秋 pp.78-79
PR