科学的理論や仮説は,観察や実験によって検証される。1つでもその理論や仮説に反する事例があれば,たちどころに否定される。逆に,どんなにたくさん肯定的事例があっても,それで十分ということはない。科学の場合は,肯定より否定の方が簡単なのだ。
それに対して占いは,反証例があっても,否定されない。テレビの星座占いコーナーでその日の運勢を見るひとは,当たらないことが多くても,見るのをやめはしないだろう。本格的な占いの場合は,占いによって出たものをどう解釈するかが重要であるから,当たらないときはその占い師の評判が悪くなり,客が来なくなるだけで,その占い自体が否定されるわけではない。逆に1度でも当たることがあると,本気になって信じてしまう。評判の高い占い師には,そういう的中例が神話伝説のようになって伝わっている。当たったことだけが記憶に残り,当たらなかった例は忘れられてしまう。占いでは,否定より肯定の方が簡単だ。
板橋作美 (2004). 占いの謎:いまも流行るそのわけ 文藝春秋 pp.84-85
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