占いは,科学とは別の方法で,世界を秩序あるものと見ようとしているのだと私は考える。たとえば,易は,宇宙,世界の理を明らかにするものだった。世界の秩序,法則が理である。人生もその理のひとつのあらわれなのだ。一見デタラメに見える人生も,世界の法則に支配されているのであり,それゆえ人生をあらかじめ知ることができ,またある程度はコントロールすることができると考えるのである。西洋占星術もほとんど同じである。そのことは,第1章で紹介したケプラーを思いだせばよくわかるだろう。彼が一方では科学的天文学者で,他方では占星術師でもあることができたのは,どちらも宇宙,世界の秩序を明らかにしようとするものであるからなのだ。西欧にかぎらず,科学がはじまる以前には,占いが自然,宇宙,世界の仕組みを解明し,説明するものだったのである。
板橋作美 (2004). 占いの謎:いまも流行るそのわけ 文藝春秋 pp.88-89
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