しかし,政治家や政界関係者は,この確実ではない世界を見ると混乱してしまうようだ。2010年,私はある民主党議員に,選挙の数週間前に呼ばれた。西海岸の民主党が強い地区の議員だった。その年は民主党が優勢だったにもかかわらず,自分の議席が心配になったらしい。彼は私のサイトの予測にどのくらいの不確実性があるのか知りたがった。限りなく100パーセントに近い確率での勝利が予想されていたが,それは99パーセントなのか,99.99パーセントなのか,はたまた99.9999パーセントなのか。最後の確率——100万分の1の確率で落ちることになる——であれば,自分の選挙資金を劣勢な地域の候補者に提供するという。どうやら100分の1のリスクは許容できないらしい。
一方,予測の不確実性というものを間違って解釈している人もいる。予測が間違ったときの言い訳だと思っているようだが,それは違う。現職の議員が90パーセントの確率で当選すると予測するときには,10パーセントの確率で落選すると予測しているのである。よい予測というのは,長い目で見てこれらの確率がおおむね一致するものをいう。
ネイト・シルバー 川添節子(訳) (2013). シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」 日経BP社 pp.70
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