本書では,「客観的」と「主観的」という言葉を注意して使っている。客観的という言葉は定量的という意味で使われることがあるが,実際には違う。客観的とは,個人のバイアスを超えて,問題の真実を見ることを言う。
客観的であることは理想だが,いつも客観的でいることは難しい。予測にはさまざまな方法がある。世論調査のように定量的な変数だけをよりどころにする方法もあるし,ワッサーマンのアプローチのように定性的な要素を考慮する方法もある。いずれも,予測を導き出すのは人間の判断であり,人間の判断があるところにはバイアスがつきものだ。自分の仮定が予測にどのような影響を与えるかを常に自問しなければならない。とりわけ政治の世界では,どこを向いてもイデオロギー的な傾向が目につくうえに,誰もがノイズの多いデータから整然とした物語を編み出そうとしているので,客観的であろうとするのは容易ではない。
ネイト・シルバー 川添節子(訳) (2013). シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」 日経BP社 pp.79-80
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