長らく野球のスカウトが採用してきた評価手法に「ファイブ・ツール」というものがある。パワー,ミート力,足の速さ,肩の強さ,守備力だ。当然ながら批判も多い。四球を選ぶ,三振を避けるといった,打席での能力は項目に入っていない。また,すべての項目が同じように重要であるような印象をあたえてしまうが,実際にはショートと捕手以外のポジションでは,パワーがほかの項目よりはるかに重要となる。
ファイブ・ツールの各項目の評価が,実際の成績に結びつくのかという問題もある。ファイブ・ツールが本当に有効であるとすれば,選手がマイナーリーグの階段をのぼるにつれて,各項目の評価が統計データに反映されていかなければいけない。ミート力は打率に,パワーは長打数になってあらわれなければ意味がない。たとえば,スカウトがマイナーリーグのある選手のパワーに80点中70点を与えたとしても,1シーズンに10本のホームランを打つのに苦労しているとすれば,そのレポートは信頼できるだろうか。
ネイト・シルバー 川添節子(訳) (2013). シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」 日経BP社 pp.106-107
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