実際には,エコノミストがGDP成長率を予測するときの90パーセント予測区間——実際に検証されたもの——は,およそ6.4ポイントにおよぶ(プラスマイナス3.2パーセントの誤差に相当する)。
つまり,来年のGDP成長率が2.5パーセントになる見込みという報道があれば,それは5.7パーセントになるかもしれないし,マイナス0.7パーセントになるかもしれないということだ。後者ならかなり深刻な景気後退である。エコノミストの予測は昔からこの程度であり,改善していることを示す証拠もない。過去6回の景気後退のうち9回を当てたと自慢するエコノミストの笑い話も,さもありなんという気がしてくる。ある統計によれば,1990年代に世界中で起きた60回の景気後退のうち,1年前にエコノミストが予測できたのは2つだけとなっている。
エコノミストだけではない。このような結果はよくあることだ。専門家という人たちは,地震の予測のなかの不確実性を正直に伝えることを苦手としている。あるいは,そうすることにまったく関心を持っていない。
ネイト・シルバー 川添節子(訳) (2013). シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」 日経BP社 pp.200
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