気象予報者と気候学者の間では意見が対立することが多い。気象学者の多くは,あからさまに(あるいは暗黙のうちに)気候学に批判的な立場をとる。
気象予報者は長年,予測精度を上げようと努力してきたにもかかわらず,今でも予報が外れれば怒りのメールを受け取る。24時間後の天気を予想するのは非常に難しいことなのだ。気候学者と同じような技術を駆使している気象予報者が,今から数十年後の気候を予測できると思うはずがない。
両者の間にあるのは,コンセンサスの例と同じように,言葉の意味の問題だ。気候とは,地球が到達する長期的な均衡のことであり,天気は,そこからの短期的な逸脱を意味する。気候を予測する人は,北半球全体で平均雨量が多いか少ないかといったことには関心があるが,2062年11月22日にアメリカのタルサで雨が降るかどうかには関心がない。
ネイト・シルバー 川添節子(訳) (2013). シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」 日経BP社 pp.426
PR