このことを心に留めて,株式分析について考えてみよう。ある銘柄,あるいは株式市場そのものの毎日の上げ下げは,これらのXやOのように,まったくでたらめに起こるわけではない。しかし,そのなかには偶然が関与する部分がかなりある,といっていいだろう。ところが,市場が終わった後でなされる整然とした分析を見ると,そんなことは考えないに違いない。評論家はつねに,どの上げ,あるいはどの下げであっても説明できる。使い古された手口を用意しているからである。つねに,利食い,連邦政府の赤字,その他,弱気の展開を説明するものがあり,会社の収益の向上,利率の上昇,その他,強気の展開を説明するものがある。評論家が,その日あるいは1週間の市場の動きは,主にでたらめな変動によるものである,と述べることはまずないといっていいだろう。
ジョン・アレン・パウロス 野本陽代(訳) (1990). 数字オンチの諸君! 草思社 pp.64-65
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