1879年,同じくドイツ人心理学者のヴィルヘルム・ヴントが,ザクセン王国の教育省に,世界初の心理学研究室を設立する資金を請願した。要求は却下されたが,ともかくヴントは,すでに1875年から非公式に使っていた小さな教室に研究室を立ち上げた。同じ年,ハーバード大学の医学博士で,教授として比較解剖学と生理学を教えていたウィリアム・ジェームズが,「生理学と心理学との関係」という新たな科目を教えはじめた。また,ローレンスホールの2つの地下室に非公式の心理学研究室を立ち上げ,1891年にはハーバード心理学研究所として正式な地位を得た。
ベルリンのある新聞は,2人の先駆的な取り組みを評価して,ヴントを「旧世界の心理学の教皇」,ジェームズを「新世界の心理学の教皇」と呼んだ。2人の実験的研究や,ヴェーバーに触発された人たちの研究を通じて,心理学は遂に科学的な足場を獲得した。こうして誕生した分野は「新心理学」と呼ばれ,しばらくのあいだ,科学でもっとも話題の分野だった。
レナード・ムロディナウ 水谷淳(訳) (2013). しらずしらず:あなたの9割を支配する「無意識」を科学する ダイヤモンド社 pp.38-39
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