これを真似たある実験では,ごった返した科学の会合に,それを追って銃を持った男が駆け込んでくる。男とピエロは言い争って喧嘩を始め,銃を発射して部屋から出て行く。すべて20秒以内に起こる。科学の会合にピエロが登場したという話は聞いたことがなくもないが,実際にピエロの衣装を着ていることなどめったにないのだから,聴衆は,この事件が芝居であることに気づいて,その理由も見抜けると考えて差し支えないだろう。
ところが,目撃者はのちほど質問されることに気づいていたというのに,その報告はひどく不正確だった。報告のなかでは,ピエロの服装がそれぞれ大きく異なっていたり,また,銃を持った男がかぶっていた派手な帽子について細かく説明されていたりした。当時,帽子は一般的なものだったが,銃を持った男は帽子をかぶっていなかった。
レナード・ムロディナウ 水谷淳(訳) (2013). しらずしらず:あなたの9割を支配する「無意識」を科学する ダイヤモンド社 pp.84
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