ものによっては,本来の機能を失い,新しい機能を持つ場合もある。旧式の火のしが,服にアイロンがけをするためではなく,ブックエンドやドアストッパーにするために買われたり,素敵なジャムの瓶がペン立てになったり,ロブスター捕獲器がプランターに再利用されたりするように。この事実は,今日の競争において,火のしはアイロンがけよりもブックエンドにふさわしいことを示している。そして,メインフレームコンピュータのDEC-10は,今日では,大型船舶係留用の便利で丈夫なアンカーになる。すべて人工品はそうした転用を免れない。<本来の>目的が現在の形状からどんなにはっきり読みとれても,新しい目的が本来の目的と結びつくのは,ただの歴史的偶然によってでしかない。旧式のメインフレームの所有者がアンカーをひどく欲しがっていたところ,それがたまたま都合よく利用に供されたといった具合に,である。
ダニエル・C・デネット 山口泰司(監訳) (2001). ダーウィンの危険な思想 生命の意味と進化 p.312
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