内集団と外集団の区別が及ぼすもう1つの影響として,わたしたちは,自分の内集団を外集団よりも多彩で複雑だと考える傾向がある。たとえば,医師,弁護士,ウエイター,美容師を対象とした先ほどの研究では,被験者全員に,それぞれの職業の人が独創性や順応性などの特性についてどれだけ多様であるかを評価してもらった。すると全員が,自分以外の職業の人は自分の内集団に属する人よりもはるかに似通っていると評価した。年齢,国籍,性別,人種,さらには,通っている大学や,所属している女子学生クラブに関しても,同じ結果が得られている。
そのため,ある研究者グループが指摘しているように,おもに白人体制派向けに発行されている新聞には,「中東問題で黒人の意見が大きく二分」といった見出しが出て,まるで,アフリカ系アメリカ人が全員同じ考えを持たないのはおおごとだといった報じ方をされるが,その一方で,「株式市場改革で白人の意見が大きく二分」といった見出しが出ることはない。
レナード・ムロディナウ 水谷淳(訳) (2013). しらずしらず:あなたの9割を支配する「無意識」を科学する ダイヤモンド社 pp.250
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