ここで主役を2つのタイプに分類してみよう——コンサバティブ(保守派)とイノベーター(革新派)だ。コンサバティブは,ご想像のとおり役柄が変わるのを好まず,現状維持のために全力を尽くす。反対にイノベーターは,何度でも繰り返し役柄をつくり変える能力をもつ。とはいえ,将来に何が待ち受けているのか知る者はいないから,意識的に姿を変えることはない。つまり,たいていは自ら望んで変化するのではなく,そうしなければ舞台から消え去るしかないから,そうするのだ。未来が今とあまり変わらない場合は,コンサバティブが成功する。反対に予期せぬ変化が続く場合は,ひと握りの幸運なイノベーターが大成功をおさめるが,残りの多くはコンサバティブとともに姿を消すことになる。
コンサバティブとイノベーターはまったく別のところにいるわけではない。イノベーターは常にコンサバティブの両親から生まれるし,イノベーターの子どもはやがて新しいやり方に慣れてしまって,自分たちはコンサバティブになろうと努める。未来がわからないとすれば,できるだけ現状に合わせることに力を注ごうとするものだからだ。だがもちろん,背景が突如として変わったときには,そうした努力そのものがコンサバティブを滅亡へ導きかねない。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.27-28
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
PR