イノベーターは,不利な条件を成功に結びつけることができた。他の種が完熟果実による元来の食生活にしがみついているあいだ,新しい種は代わりの食物を主食とした。果物がなく,生活がまったく成り立たないために立ち入ることができなかった土地に,イノベーターは新たな食物を求めて移り住んだ。競争相手によって最適な生息地に周縁に追いやられ続けた結果として,行動だけでなく体の構造が変化したことが強みとなったのだ。中世人類の類人猿について言えば,その強みがあったからこそ,熱帯アフリカの外へと広がり,アフリカとユーラシアの広大な地域を占拠していた季節性の亜熱帯林を活用することができたのである。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.36
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
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