新しい化石人類,初期人類,人類が科学論文に発表されるたび,私たちの進化の道筋はますます複雑で,わかりにくいものになっていくように思える。研究に用いることができるのは,ほんのわずかな,通常は不完全な標本ばかりで,その関係性を考える際には,必然的に多くの憶測が含まれることになるからだ。これはまるで,1万ピースのジグソーパズルの全体図を,たった100ピースから把握した気になるようなもので,結果的に行き着くところが,さまざまな化石をどうにか関連づけて現生人類までつなげた,雑多な進化の系統樹だということも少なくない。そうした解釈はやがて有力メディアによって独自に読み替えられ,あたかも疑いのない事実のように,雑誌やテレビのドキュメンタリー番組で取り上げられる。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.41
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
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