景観は現在の地球に近づき,森林に覆われた温暖な世界は遠ざかっていった。アフリカは今より緑が多かったものの,熱帯雨林は縮小し,森も分散しはじめていた。第二の年代の前半に登場したラミダスは,先人の伝統を引き継ぐかのように,森林が多くを占めるモザイク状の環境で暮らし続けた。これが意味するのは,初期人類は森の中で生活しているときに,すでに地上を歩いていたということだ。人類が森を捨て,開けたサバンナに進出した瞬間に二足歩行がはじまったという古い考えはもはや用をなさない。二足歩行は,どうやら樹上で始まったようなのだ。
この驚くべき結論は,オランウータンの歩き方を観察することによって導き出された。オランウータンには,ゴリラやチンパンジーにはないヒトとの共通点がある——まっすぐに立つ場合,チンパンジーとゴリラは後肢のひざが曲がるのに対し,オランウータンとヒトは,ひざをまっすぐ保ったまま立つのである。このような特徴は,枝の上を歩くオランウータンにいくつかの利点を与えた。たとえば折れやすい細枝を歩くときは,必要ならば重心を移動させながら思い切って後肢で立つことができ,安全のために手でしっかり別の枝をつかむこともできる。そうすれば片腕が自由に動かせるので,さもなければ手の届かなかった果実が得られるのだ。また,この方法で樹上を歩けば,木のあいだを渡るときにいったん地上に降りる必要がなくなる。
これは,大型類人猿の共通祖先が身につけていた基本的な形のロコモーション[移動様式]と考えられ,東南アジアの熱帯雨林で今も同じような生活を続けるオランウータンに受け継がれてきた(その代償として,オランウータンは縮小した熱帯雨林に囚われてしまうことになったのだが)。おそらくオランウータンは,現在まで生き残った唯一のコンサバティブ類人猿であり,他のコンサバティブはどれも絶滅したか,生き方を変えてしまったのだろう。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.55-56
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
PR