この新しい議論において,ある研究チームは「5万年前に現生人類が突如として現れた」と主張している。「生き残りに有利な突然変異の副産物として,行動の完全な現代化と,現代人の地理的拡大が生じたと考えるのは,まったく理にかなっている」と言うのだ。だが私はこの考え方に納得がいかない——私たちの祖先を一挙に現代的にした突然変異の証拠が皆無だからだ。それよりも,現生人類のものと識別できる行動が徐々に現れたというほうが,より説得力がありはしないだろうか。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.104
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
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