ホモ・エレクトスから早期現生人類,およびそれ以降の人類への進化の大半は,水不足の世界,言い換えれば,水が環境における主要な制限要因だった地域で起きてきた。そのような環境では,広範囲に散らばった水源や,季節によって現れたり消えたりする豊かな緑を追求する能力を身につけることは,高い優先順位をもっていたことだろう。モザイク状の生息地があった当時,その中心には頑強なホモ・ハイデルベルゲンシスや,早期現生人類へと変化した彼らの子孫が暮らしていたが,進化が起きていたのはやはり周縁部でのことだった。そして,ますます広い地域で降雨と干ばつが繰り返され,季節性の草原との関係が深まっていくと,かつては周縁部と呼ばれていた土地で生き抜いた人類が運よく繁栄を勝ち取ることになるのである。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.108
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
PR