技術の進歩としてもてはやされるものに,現生人類による飛び道具の製作がある。だがそのような技術は,更新世中期のヨーロッパにいた屈強な動物たちに対しては,ほとんど役に立たなかったことだろう。そうした動物を倒すにの必要だったのは,体力,したたかさ,協力関係,そして獲物に接近することだった。ネアンデルタール人が接近をいとわなかったのは,彼らが現代のロデオ騎手に匹敵するけがを繰り返し負っていた痕跡からも明らかだ。ネアンデルタール人が肌の触れ合う距離で獲物を相手にしたのも珍しいことではなかっただろう。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.162
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
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