ネアンデルタール人は愚鈍な獣であり,地球という惑星でなんとか25万年余をやり過ごしたにすぎない——そう考える人たちにとって,ゴーラム洞窟は実に驚くべき新発見に満ちていた。まずわかったのは,ネアンデルタール人が食べた哺乳類の骨の80パーセント以上がウサギのものだったことだ。見つかったウサギはイベリア半島に固有の種で,洞窟外の砂丘は巣穴をつくるのに理想的な場所だったので,かなりの数が生息していたと考えられる。したがって,ウサギを捕まえるのは難しい仕事ではなかったに違いない。また鳥の化石も豊富で,145種類もの鳥類が発見されている。この数はヨーロッパに生息する繁殖鳥のなんと約4分の1に相当するが,アフリカの「冬の別荘」とヨーロッパの「夏の邸宅」を行き来する渡り鳥にとって,ジブラルタル海峡が拠点のひとつになっていることを思えば,不思議なことではないだろう。もちろん,ネアンデルタール人はそうした渡り鳥も食料にしていた。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.204-205
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
PR