27の異なる地域に生息する162頭のオオカミと,67犬種の飼い犬140頭から採取したミトコンドリアDNAを解析したところ,イヌの起源が13万5000年前までさかのぼるかもしれないことがわかったのである。この驚くべき結論が正しければ,ネアンデルタール人が生きていた時代にイヌが誕生したことになるが,それが行き過ぎだとしても最終氷期のさなかに最初の家畜化が行われていたという考えは十分説得力をもつだろう。
農耕の発見に先立つこと数千年,イヌの家畜化は現生人類にとって画期的な事件だった。イヌは人類が初めて手にした「生きた道具」であり,狩猟における武器だった。また,他の集団や捕食動物から村を守るためにも利用されたはずだ。イヌはその社交性によって現生人類と親密な絆を結び,現在の私たちにとってもなくてはならないパートナーとなったのである。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.241-242
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
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