私たち現生人類の遺伝子は,今日地球上に存在している他のあらゆる種と同様,現時点で成功しているにすぎない。これまでも見てきたとおり,私たちが生き残ったのは,成功の可能性をもった遺伝子が幸運も持ちあわせており,たまたま適切な条件に出会ったり,地球の変化の速度と足並みをそろえることができたからにすぎないのだ。一方で,成功の可能性をもち,実際に大きな繁栄を手にしたにもかかわらず,運が尽きて姿を消す者たちも少なくなかった——大多数の早期現生人類がそうだし,ネアンデルタール人がそうだった。
ネアンデルタール人は滅んだ。たしかにそれは事実に違いないが,そこだけを見て,私たち現生人類についても悲観的な未来を予言しようとは思わない。そもそも,これほどまでに人口が増えてしまった今となっては,地球規模の大災害でも起こらない限り,気候がいくら変わったところで人類が完全に滅びることはなさそうだ。
クライブ・フィンレイソン 上原直子(訳) (2013). そして最後にヒトが残った 白楊社 pp.288-289
(Finlayson, C. (2009). The Humans Who Went Extinct: Why Neanderthals Died Out and We Survived. Oxford: Oxford University Press.)
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