スキナーは,デザイン(もしくはデザイン能力)を1回で(すっかり)説明しつくそうとする,貪欲な還元主義者であった。彼に対する適切な応答は,「よく頑張った(ナイス・トライ)。けれども,あなたが考えたよりずっと複雑なことが分かったのだ」である。誰かが,嫌味を込めることなく,彼にそう言ってやるべきだったのだ。スキナーはほんとうによく<やった>のだから。それは,偉大なる思想であった。多くを学習することができた厳密な実験法とモデル構築とを,半世紀の間,それは鼓舞(あるいは挑発)してきたのだから。だが皮肉なことに,それは,ホージランド(Haugeland)が「古きよきスタイルの人工知能 Good Old-Fashoned AI」つまり「GOFAI」と名づけた<もうひとつの>貪欲な還元主義の失敗の,繰り返しであった。これによって心理学者たちは,心は実に,卓抜な構成的複雑さを備えた現象なのだと,本当に確信させられたのだ。GOFAIを基礎づけている洞察は,すべてのコンピュータは単純な部分から構成されるが<無制限の複雑性を持つ>という,チューリングの認識であった。
ダニエル・C・デネット 山口泰司(監訳) (2001). ダーウィンの危険な思想 生命の意味と進化 p.522
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