忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

栄養強化の歴史

食品の栄養を強化するという考えは1830年代初めにまで遡る。甲状腺ホルモンの異常分泌によって首がグロテスクに腫れる甲状腺腫は,多くの地域の共通の問題だった。それは一種の精神病であるクレチン病になることがあった。甲状腺腫が非常に流行っている地域は土壌に沃素が欠けていることがわかった。沃素を食べ物に加えると,甲状腺腫もクレチン病も生じなかった。したがって,あるフランスの化学者はすべての食卓塩に沃素を加えることを提唱した。判で押したように塩を沃素で強化するというやり方は,1900年代初めからヨーロッパに広まった。そして豊かな西欧では,甲状腺腫は徐々に忘れられた病気になった。しかし,食卓塩のすべてに沃素が入っているわけではないパキスタンでは,何百万という人間が沃素の欠乏で,いまだに甲状腺腫に罹るおそれがある。
 それは,初期の栄養強化の特殊なケースだった。もっと一般的な栄養強化は,1940年代にやっと始まったのだ。国民が食べ物から十分な栄養を摂っていないのを,戦時の政府が極度に恐れたせいだ。健康にとって非常に重要な微量元素であるビタミンについての知識は,1897年にオランダの病理学者クリスティアン・アイクマン(1858〜1930)が,チアミンが含まれている研がない米を食べると脚気に罹らないことを発見して以来,次第に増えてきた。20世紀が経つにつれ,新しいビタミンやミネラルが次々に誕生し,もてはやされた。1900年代には,それは佝僂病を治す魚油だった1920年代には,それはカルシウムとビタミンAだった。その結果専門家は,大量の牛乳を飲み,青物をたらふく食べることを推奨した。それはまた,カルシウムの吸収を助け,佝僂病を防ぐために,牛乳にビタミンDを加えることにもなった。次にビタミンCとビタミンGが現れた(後者はのちにリボフラビンと改称された)。1940年,合衆国では再びチアミンの出番になり,ヒトラーに対する戦いに貢献する「士気昂揚ビタミン」として知られるようになった。副大統領のヘンリー・ウォレスは,食事にチアミンその他のビタミンB群を加えることは,「人生を計り知れぬほど生き甲斐のあるものにする」とまで言った。

ビー・ウィルソン 高儀 進(訳) (2009). 食品偽装の歴史 白水社 pp.295-296
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]