食品に関する恐ろしい話には事欠かない。2006年9月,ドイツで肉の卸売り業者が自殺した。ドイツの屋台でドネル・ケバブとして売られることになっていた120トンの「腐敗した」肉を警察が押収したあとで。ミュンヘンの警察は「ドネル・ケバブ・マフィア」が欺瞞工作をしていると語った。マフィアは販売期間最終日付をとうに過ぎた肉を再利用したのである。2004年,いわゆる「サリー州カレー」スキャンダルが起こった。分析官は英国中のカレー店で売られている。チキン・ティッカ・マサラの中に,「違法で危険性のある」レベルの食品着色剤が入っているのを発見した。(それに対して『サン』紙は「われらのティッカを奪うな」と応じた。まるで,カレーをもっと健康的なものにしようとするのは大きなお世話だとでもいうように)。しかし,そういうことが起こるのは,単に安売りのファストフードの店だけではない。日常的な欺瞞は,世界で最も高いレストランでさえも起こる。
ビー・ウィルソン 高儀 進(訳) (2009). 食品偽装の歴史 白水社 pp.350
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